炎症や乱視の後遺症に悩まされたこれまでの白内障手術
白内障は、初期の段階では自覚症状はほとんどありません。水晶体の白濁が進んでくるにつれ、光をまぶしく感じたり、視力が低下してものが見えなくなってきます。
治療法は、まず水晶体の混濁の進行を予防するための点眼薬の使用から始まります。しかし、これは根本的な治療ではありません。点眼しても進行してゆくというのが通常のパターンです。
白内障が進行してゆくと、最後は手術ということになります。手術の方法は、まず濁った水晶体の内容物を除去し、そこに人工のレンズ(眼内レンズ)をはめ込むというものです。
【白内障に使用する眼内レンズ】
この手術は、水晶体の袋の部分(嚢といいます)のうち、前部の中心部分を丸く切って取り去ります。
その丸い穴から超音波を当てて水晶体の核を細かく砕いて吸引し、残った袋の中に眼内レンズを入れたあと、傷口を縫合するというものです。
白内障の手術は広く普及していますが、切開したあと縫合が必要なため、手術後に炎症や乱視が起こりやすいという欠点があります。
後嚢が破れると失明の危機も
そこで考え出されたのが、「水晶体超音波乳化吸引術」です。
この手術は、水晶体の中にある固い核に超音波を当てて砕き、それを乳化させたあとに吸引するというものです。その後で、ぽっかり空いた嚢の中に折りたたんだ眼内レンズを挿入します。
折りたたみ式の眼内レンズは、嚢の中で自然と広がり、中にすっぽりと納まります。この方法だと傷口が小さいので、乱視になる可能性も少ないのです。
現在、この方法が多くの病院で採用されていますが、問題点もないではありません。水晶体の核を超音波で砕く際、水晶体の袋の後部である「後嚢」を誤って破損してしまうことがある点です。
後嚢が破れると、水晶体の核の破片が硝子体の中に落ち、感染症や網膜剥離といった失明につながりかねない事故を起こす可能性があります。そうなると、再手術を受けなければなりません。
白内障の新手術「プレチョップ法」の手術時間はわずか3分
そうした危険性を回避するために考え出されたのが、「プレチョップ法」 という新方式の手術です。
この方式は、前記の「水晶体超音波乳化吸引術」を行う前に、プレチョッパーという特殊なピンセットで水晶体の核を4つに割っておきます。
そうすることによって、固い水晶体の核を超音波で乳化して吸引するのが容易になるのです。あとは従来と同じ方法で眼内レンズを挿入します。
このプレチョップ法は、東京の「三井記念病院」の赤星隆幸眼科部長が考案した方法で、これにより手術の精度、安全性が飛躍的に向上しました。この白内障手術の成功率は、ほぼ100%といわれています。
片目の手術に要する時間は、約3分。両目でもわずか6、7分という短時間です。しかも最近、眼内レンズに健康保険が適用されるようになりました。費用は片目で約25万円、自己負担はその1〜3割になります。
白内障の新手術で近視や乱視も改善した
また、この手術の良いところは改善だけでなく、近視や乱視といった目の屈折異状も改善することです。
高齢の患者の場合、角膜が縦と横で長さが異様に異なる乱視があります。この手術で角膜の最もゆがんでいる部分を選んでメスを入れると、ゆがみが矯正され、乱視も改善してしまうのです。
近視の場合も、角膜の凸部分を削るようにメスを入れることで、屈折が改善します。
また、眼内レンズの進歩により、後発白内障の起こる確率も低下しています。従来のレンズでは、手術後に後嚢が濁ることにより後発白内障が10%の割合で起こっていましたが、最新の眼内レンズの使用により、確率は3%に下がっています。
しかし、目にレーザーを照射するという行為に恐怖を感じる方は多く、実施に手術という段階で止めてしまう人も多いようです。
3.白内障のよくある質問Q&A >>
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